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南国のイメージを思い浮かべるときに、何を想像しますか?どこまでも透き通った青い空、マリンブルーに輝く珊瑚礁 、白い砂浜、と色々有りますが、その光景に欠かせないのが「ヤシの木」。「♪名も知らぬ 遠き島より流れ寄る椰子の実一つ」と昔から歌われ、その名前は知れわたっています。北マリアナ・サイパン島へ訪れたこの機会に、「椰子(ヤシ)」を知り、お土産と一緒に南国の雑学として持ち帰ってください。

ヤシの種類
一口にヤシといってもその種類は3500種にのぼるそうです。今回、その中でもサイパンで目にすることが出来る数種を紹介します。

ココヤシ

美味しいジュースが入った大きな実をつけるヤシ科の代表。南国の風景には欠かせないモノ。緑色のものと黄色のものが有るが実の熟する過程で色が変わるわけではない。
写真の実は黄金ヤシと呼ばれる金色に輝くココナッツ。



  マニラヤシ

たわわに成った実が熟すと、真っ赤に変色する。街路樹にも利用されている。

ロイヤルパーム

ひときわ高く真っ直ぐに伸びる太い幹が特長。成長とともに古い葉を落とし、その痕跡が美しい縞模様となり幹に刻まれていく。ガラパン地区の中央分離帯に植えらえている。

 

ビンロウヤシ

島内でも数多く見られる。庭の木として、またその実は嗜好品として、島の人々に親しまれている。くわしくはコレ!サイパン参照。

  フェニックスヤシ

日本でも観葉植物や温暖な地域の公園や街路樹に見る事が出来るが、勿論自生ではなく育苗し成長させたもの。
代表選手登場、ココヤシとココナッツ

南国情緒を連想させるヤシの仲間の代表「ココヤシとココナッツ(ヤシの実)」について語りましょう。ココヤシは太古の昔、恐竜時代以前から綿々と生き続けている植物というだけでも驚きです。恐竜も滅びてしまった環境変化に対しても、生き延びてきたんですね。分類上は被子植物、ヤシ科に属する高木。高さは30mに成長。実が落下してから発芽するまで約3ヶ月。発芽した芽が高さ30cmくらいになると実の部分から根が出て養分を土壌から吸収し始めます。その後、3年〜7年で実がなります。樹木は、50年から70年生き続けるそうです。自生域、つまり自然に生長し繁茂出来る地域は、最寒月平均気が18℃以上の地域。日本では、北マリアナの北に位 置する東京都小笠原母島南側から、沖縄県西表島のラインで自生が確認されています。このラインより北では、黒潮の「海道」に乗って実が流れ海岸に打ち上げられますが、温度が低い地域では繁殖が出来ないようで、沖縄本島以北の日本人の生活圏内では、自然の形で見ることが出来ない植物なのです。
  名前とその由来

樹木としての名称はココヤシ。ジュースがたっぷり入った大きな実をつけます。この実がココナッツ。ココナッツは周囲が繊維質の層に覆われ、その中に堅い殻が入っています。これがヤシ殻。この殻の内側に付いた乳白色の果 肉を胚乳といいます。油脂が非常に多く含まれ、直接食べたり、乾燥させてお菓子の材料やココナッツオイルの原料として用いられます。乾燥した物はコプラと言います。次の写 真を見てください。何かに似ていませんか?愛くるしい動物、そうお猿さんの顔。ポルトガルの「COCO=猿」からその呼び名が生まれました。15世紀から始った大航海時代にポルトガル人冒険家達がつけたのかもしれません。
スーパー植物・ココヤシの利用

ココヤシには捨てるところが無いと言われるほど利用価値があり、南の島において昔からココヤシが熱帯・亜熱帯に住む人々の生活基盤を支えてきました。ただ、物質文明が進む中、その価値が薄れているのは否めませんが、現在も資源の乏しい南の島では、昔ながらの生活(今風に言えばロハスな生活)をしている人々は、依然、貴重な生活資源として利用しています。手元に日本植物園協会刊行「ヤップ島植物調査報告書」なる資料があります。この中での記述によるとヤップ島内の村での調査では、「1人当たり15本のココヤシがあれば成人1年の生計が成り立つ」という報告がされています。まさに生きた財産とも云いましょうか?では、ココヤシがどのように人々の生活に関わり、支えてきたのか、様々な利用の様子を紹介しましょう。
  ココナッツミルク

胚乳を削り、水を加え、弱火で煮込んだものを搾った乳白色の液体。主に熱帯地方では、一般 に料理に用いられ、特に香辛料の効いた料理に相性が良い為、エスニック料理には広く使われている。
  ココナッツオイル

ココナッツミルクを長時間煮沸させて、油脂分だけを分離採取した油。抗菌作用を持つドデカン酸を多く含み、主に調理やスキンケア、整髪料として用いられ、特に南の島ではベビーオイルとして、乳児のスキンケアに用いられる。
  トゥバ

ココヤシの樹液を自然発酵させた酒。甘酸っぱくさらっとした甘酒。数日で酢に変わってしまうので貴重なもの。
 

ヤシの葉で編んだ籠。プラスチックの容器に入れると痛み易い果 物や野菜も、ヤシの葉で編んだ籠ならば通気性があるので長持ちする。軽くて丈夫。民芸品としても質の高いもの。
その他、ヤシ殻は食器に、外皮の繊維はたわしの材料に、幹は木の少ない南の島々では貴重な木材として、一部の島では珊瑚と一緒に乾燥させたヤシの幹を焼き、灰になったものをさらに細かくしセメントのような建築資材として使っています。またヤシ殻を炭として利用したり、葉の部分の繊維はなめしてロープや紐、さらにはサンダルに、と枚挙にいとまがないほど様々な物が生活に活用されています。まさに自然の恵み、スーパー植物ですね。

ココナッツ刺身


ココナッツジュース


ココナッツアップル

  興味津々、食物としての利用

まずはなんと言ってもココナッツジュース。落果する前の充分成長した実の中にたっぷり入っています。味はまさにスポーツドリンク。その昔、航海に出る船乗り達は、命の水として沢山のココナッツを船に積んで大海原に出航したそうです。このジュースはホテルや町のレストランで飲むことが出来ます。 食用に利用出来る部分は、ヤシ殻の内側に時間の経過とともに層状に付着する胚乳といわれるところ。若い実はこの胚乳を刺身として食べることができ、その味は本物の超新鮮なイカもしくは、やわらかーいホタテ貝の様です。植物の実でそんな味がする訳がない!と思われる方は、サイパン熱帯植物園のツアーもしくは、サンホゼにある味つえレストランへ足を運んでみてください。新鮮なココナッツの刺身を食べることが出来ます。 胚乳部分の層が厚くなり硬化したものはコプラとして利用されます。ヨーロッパでは殻付きのまま街角で売られていて歩きながら食べるスナックとして親しまれています。さらに実を割らずに時間を経過させると、やがて発芽します。 その発芽した芽が30cm〜50cmになるころあいを見て中を割りると、胚乳の中にココナッツアップルといわれる部分が出来ています。これがスポンジ状のサクサクとした食感で、ほのかに甘くとても美味しくて、なんとなく懐かしいような味でもあります。このココナッツアップルはやがて実の内側全体に広がっていきますが、大きくなった物は美味しくないそうです。 こうして、ココナッツは実の中で変化を続けていてその時々に応じて様々な食べ方があります。ヤシサラダといって、一本のココヤシの成長し続けている若い芽の部分を食べる事があるそうです。但しこの部分を食べてしまうと、その後ヤシは成長が止まり死んでしまうそうで、例えば台風などで倒れてしまった木に限って採取し食べるそうです。一本のココヤシから、30〜40cm位 しか採れず、採ったら最後、木が死んでしまうことから貴重な珍味として知られています。

ヤシの話をしてくださった
サイパン熱帯植物園の 住友園長
  ヤシの木よもやま話

サイパンのココヤシは他の熱帯地方のそれに比べて比較的背の高さが低いそうです。これは島の土壌の層が薄く縦深に根が張れない事により、高く成長できないという環境のためです。このココナッツ、重さが5〜6キログラムになります。風の強い日はヤシの木下に立つな!といわれます。なぜ?これが30mの高さから落果 し人に命中したら、怪我では済まされないような破壊力です。ビーチを散歩したり、公園にいると時々「ドスーン!」と突然大きな音がします。実が落ちたときの音です。島内各ホテルの庭園や沖に浮かぶ観光客でにぎわうマニャガハ島では、事故防止の為に落果 する前にココナッツを切り落としています。時にフロントガラスが大きく割れている車を見かけます。「あー、ココヤシの下に止めちゃったな。」と一目瞭然。レンタカーをご利用の際は頭上のココナッツに注意してくださいね。 また、アブラヤシやマニラヤシの実から採取される植物油から精製されるバイオディーゼルという燃料が作られることをご存知ですか?既にマレーシアをはじめ東南アジアの一部では生産が始まっています。バイオディーゼルは化石燃料の軽油に代わる画期的な燃料で、ディーゼルエンジンの機構を一切変える必要が無く、そのまますぐに利用できるたいへん有効な燃料です。また化石燃料の枯渇、大気汚染を考える上での画期的なエネルギーとして注目されています。
  南国の恵み、ヤシの木

熱帯・亜熱帯で暮らす人々は昔からココヤシをはじめヤシの仲間から多くの恩恵を受けてきました。資源が乏しい環境の中、ヤシの自生する地域で生活する人々にとっては、まさに「神様がくれた恵み」とされてきました。近年ここサイパンでも海洋汚染、廃棄物の問題など環境に対する姿勢が問われています。ココヤシをはじめ多くの有効活用可能なヤシ類を再認識することで、美しい島の姿をいつまでも保ちつづけることが出来るような気がします。ヤシはまさしく南国のシンボル、ヤシを語ることなく南の島の生活は語れません。


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